本研究では、フランス、台湾、そして中国大陸の各機関における史料調査を通して、おもに次の2点を明らかにした。(1)18世紀、とくに禁教体制確立以降における、天主教を信仰する満洲旗人と在華イエズス会士との日常的交際の実態、ならびにこうした交際が在華イエズス会士による中国思想の翻訳全体に影響を与えた可能性が高いことを明らかにした。(2)18世紀後半の在華イエズス会士がはじめてヨーロッパへ『四訳館考』、『大清一統志』、『華夷訳語』の内容をもたらし、清朝による帝国統治および国際関係をめぐる理解に、大きな影響を及ぼしたことを明らかにした。
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