昨年度に収集した、ヒッタイトのこれまで知られているすべての神託文書について、もう一度目を通したうえで、概観を得るための基礎的な作業をおこなった。まず、収集した神託文書どうしの接合を見つけてよりまとまったテキストを構築することを継続して試みた。次に、神への質問の種類や使用されている技術及びその組み合わせに基づいて分類をした。 そのうち、鳥占い文書については。博士論文作成後に公刊された文書を集めた昨年度の成果をもとに、さらに詳細な分析をおこなった。まず技術として、それぞれの質問において鳥の観察のみをするのか、内臓やシンボルなどの組み合わせるのか、組み合わせる場合にはどれをどのような順番で組み合わせるかを調べた。また、吉凶の判断が、鳥の飛ぶ方向以外の要素に左右されるかも分析した。さらに、観察される鳥の種について、どの種とどの種を同時に観察するかを検討した。 また、昨年度収集して翻字・翻訳・注釈をおこなった蛇占い文書については、鳥占い文書のみならず、シンボル占い文書とも共通点があることを考慮して、述語の意味ならびに吉凶の判断について、鳥占い文書とシンボル占い文書の両面から再検討した。 鳥占いと蛇占い以外の内臓占いやシンボル占いについては、予想以上に文書の数が多かったため、適切な接合を見つけたり、技術の組み合わせによる分類をするのに時間がかかった。したがって、翻字・翻訳・注釈ならびに技術の組み合わせの原理や質問との関係などの解析については、開始したものの終わっていないため、現在申請中の挑戦的萌芽研究「ヒッタイトの占い文書の概観と分析」において続きをおこなう予定である。
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