本研究の目的は、タスク特性に着目してアウトソーシング・マネジメントを明らかにすることである。具体的に、インタビュー調査を通して企業のソフトウェア開発アウトソーシングにおける統合マネジメントを考察する。研究対象として主に中国大連ソフトウェア産業集積のなかの日本企業と現地企業を取り上げ事例分析を行った。 従来の研究では、オフショア開発を行う理由として、コスト削減のみならず、開発人材の確保も挙げられるため、日本企業からのオフショア開発は今後も伸び、人件費が安い中国内陸部やベトナム等の国への発注が増えると予想される。しかしながら、どのような製品、工程を海外に出し、現地企業とどのように付き合い、現地産業がどこまで発展しているのか?と一連の課題を考える必要があるが、既存研究は全ての答えを用意しているわけではない。従って、本研究は主に中国大連ソフトウェア産業集積のなかの日本企業と現地企業計4社を取り上げて、詳細な事例分析を行い、2者の相互作用とその影響を考察した。 これまでの実証データに対してどのような理論フレームワークで分析するか、ということに特に力を入れてきた。具体的には、製品アーキテクチャ論を援用し、多国籍企業と海外企業との相互作用、さらに2者間の相互作用が現地産業集積の形成に与える影響を考察した。本研究の成果として主に次の2点が挙げられる。一つ目は、中国大連では現地企業はソフトウェアという専門的技能のみならず、日本企業との取引から関係的技能も蓄積され、自動車産業で見いだされる特徴が観察された。二つ目は、多国籍企業と現地企業の相互作用を取り上げることによって、多国籍企業起点の産業集積の形成について製品アーキテクチャ論を用いた分析フレームワークの有用性が高まった。
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