本研究は、過疎高齢化が進む農山村地域において実施されている様々な地域おこしの活動に注目し、それらが高齢者の社会的孤立に対してどのような影響をもたらしうるのかを明らかにすることを目的として実施された。今年度は、対象地域の3自治体において、60歳以上の個人を対象とした生活環境アンケート調査を実施した。この調査は、①交通や買物、医療・介護施設へのアクセスなどの生活に必要な基礎的サービスの状況、②世帯の農業、雇用、および経済状況、③ご近所付き合、および転出家族とのつながり、④居住地域での生活に対する満足度・孤立度、⑤居住する自治体での地域おこし活動、に関する質問項目により構成された。調査対象のうち、特に大型合併により誕生した自治体での調査では、旧自治体単位でサンプルを設定したことにより、地理的要件との関係が深いと考えられる項目について、個別の現状分析を実施できた。このことにより、ひとつの自治体の内部において、住民の生活圏を軸にしながらの政策議論に貢献するデータを提供することができた。一方で、社会的孤立状態にあると考えられる個人を対象とした調査については、参加者の確保に困難が認められた。そのため、調査の実施形態を地域の歴史について昔と今の写真を活用しながら聞き取りを行うワークショップに変更し、これを地域の高校生をはじめとした若い世代にも参加してもらって実施した。年度後半には郷土食を媒体に、複数の住民グループを対象に聞き取り調査を行った。これらの調査より、本研究の主対象である高齢者に加えて、同地域に居住する若い世代に対しても、地域おこしの活動について聞き取りを実施することができ、幅広い世代からデータを収集することができた。現地調査の内容については取りまとめを行い、対象地域の自治体へとフィードバックの機会を設けたことにより、今後の地区単位での政策議論にて活用されることが期待される。
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