研究課題/領域番号 |
15H06123
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中津 真美 東京大学, バリアフリー支援室, 特任助教 (90759995)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | CODA / 聴覚障害者 / 親子関係 / 役割逆転 / 障害者支援 / 親子関係 / 障害のある親 / 手話通訳 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、聴覚障害のある親をもつ健聴の子ども(Children of deaf adults;CODA)と親との関係性について、CODAの通訳役割に基づいた親子の役割逆転(role reversal)の観点から、その構造と機序を解明することである。平成27年度は、CODAが親を擁護する認識と、聴覚障害のある親がCODAに擁護される認識の構造と機序を検討した。対象は、13歳以上のCODA104名及び聴覚障害のある親97名であった。全国の聴覚障害者団体、CODAのセルフヘルプグループへの依頼の他、機縁法を用いて、自記式無記名質問紙調査または無記名web調査を実施した。その結果、CODAの親を擁護する認識は、因子分析により「親への積極的擁護」「親の無力さによる不可避的擁護」の2因子とした。親のCODAに擁護される認識は、主成分分析により「CODAへの被擁護認識」とした。次いで、抽出した擁護・被擁護因子を規定する要因に、親子関係に係る心理的状況が考えられたことから、CODAと親それぞれの心理的状況因子を抽出した。その結果、CODAでは「親と親の障害の否定・困惑」「CODAとしての自己認識形成」「親との精神的分離」の3因子とした。親では「子育ての困惑・不安」「自己の障害未受容」の2因子とした。以上を基に、CODAの親を擁護する認識及び親がCODAに擁護される認識を目的変数とし、繰り返しの重回帰分析を行った結果、CODAにおける親への積極的擁護認識は、自己認識形成の心理的状況に正の影響を受けており、親の無力さによる不可避的擁護認識は、否定困惑、精神的分離に正の影響を受けていることがわかった。また、親におけるCODAへの被擁護認識は、困惑不安、障害未受容に正の影響を受けていることがわかった。以上により、CODAと親それぞれの擁護・被擁護認識の構造と機序を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における「CODAの通訳役割に基づいた親子の役割逆転の観点から、CODAと親の関係性構造と機序を解明する」目的のうち、平成27年度は、CODAが親を擁護する認識及び聴覚障害のある親がCODAに擁護される認識の構造等を、それぞれ明らかにすることができた。このことにより、平成28年度の目的である「親子の相互性から役割逆転関係を検討する」ことが可能となり、上記の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、予定通り、CODAと親の相互性から、役割逆転関係の構造と機序を検討する。また、CODA親子の分類を試み、各々に影響を与える諸要因の分析も順次進める。
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