本年度は、英語が苦手な生徒に対する学習支援方法の検討及び、昨年度収集したデータを分析し、検査バッテリーの開発に取り組んだ。 英語が苦手な中学生4名を対象とし、個別に週1回60分程度の指導を行った。指導は、日常の英語学習の補助と、集中的な音韻指導を並行した。日常の英語学習の補助としては、英語のワークブックやプリントの電子化の方法、音声読み上げ機能の活用方法に関する指導を行い、日々の英語学習が1人で進めていけるよう、環境を整えた。集中的な音韻指導においては、聴覚刺激と視覚刺激を統合した課題を作成し、音韻のルールを指導した。その結果、特に「読み」の部分において、効果が見られた。ただし、「書き」の部分においては、正しい綴りが定着したのはわずかで、綴りの定着の困難さが、改めて明らかになった。本研究では、単語レベルで指導を行い、単語の「読み」においては効果が見られたが、文章となると流暢に読むということはやはり難しく、このような生徒達に対する音声読み上げやタイピングの補助の必要性が改めて示唆された。英語を母国語とする国では、英語のディスレクシアに対するICTの活用が合理的配慮として広く実施されてきている。今後は、彼らに対する学校での英語学習時の合理的配慮についても検討していく必要性が示唆された。 検査バッテリーの開発については、英単語課題の分析を詳細に行い、学年ごとの得点率、音声読み上げの効果、綴りの定着度、音韻の定着度を算出し、それぞれの差異により、英語の読み書きを評価するバッテリーを開発した。実際に、分析した結果、音韻として英単語の知識は積み重ねてきているが、それを正しく綴り表出したり、また表記されているものを正しく音声化するという部分でつまずいている生徒が、通常学級にも多く在籍していることが明らかになった。本バッテリーは、近日中に一般に公開予定である。
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