数十年の懸案であった励起子ボースアインシュタイン凝縮について、実現、その性質についての解明を目指す実験を行ってきた。希釈冷凍機を用いた極低温実験において、従来の発光測定では直接的な凝縮体の検出が難しいことを検証し、新たに励起子の1s-2p遷移を用いた誘導吸収測定(Lyman分光)の実験系の立ち上げを進めてきた。本測定を行うためには室温の熱輻射を抑えて、プローブ用の中赤外光を導入することが最大の問題であった。具体的には冷凍機内に光学系を構築することや、適切な光学窓を取り付けることが技術的な課題であったが、ここまでの進展で解決し、本測定法の最適化、完成ができている。また誘導吸収分光の立ち上げとともに、凝縮体の空間的検出を行うためには、長時間測定を要するイメージングを実現する必要があり、安定的な測定系の実現も重要な課題であったがこれまでの成果により、イメージングが可能となった。 本年度の成果によりプローブ光照射による励起子温度上昇が本研究において問題になり得ることを、励起子発光の精密分光により明らかにし、プローブ光の入射強度の上限を決定した。上限を超えないプローブ強度での吸収分光から、極低温、強励起下の励起子密度分布の正確な評価を行えるようになった。また、時間分解吸収分光にも成功し励起直後の密度分布から定常状態の密度分布への変遷を観測し、さらに励起後の減衰についても観測、解析を行い、時間分解発光測定との比較を進めた。
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