研究課題/領域番号 |
15H06135
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東野 寿樹 東京大学, 物性研究所, 研究員 (30761324)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 有機トランジスタ / 有機半導体 / 有機伝導体 / 水素結合 / 結晶構造 |
研究実績の概要 |
本研究では,水素結合相互作用に基づく強固な分子配列を有する有機トランジスタの開発と機能物性の解明を目的として,縮環π電子系を介して水素結合部位を結合させた新規な電子ドナー分子を設計・合成し,単結晶・薄膜・界面における水素結合様式や分子配列,電子構造と各種物性との相関を考察した. 縮環π電子系として,有機トランジスタ材料として有望視されているベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)に着目し,標的とする水素結合型BTBT誘導体(BTBT(OH)_2)を合成した.しかしながら,単結晶および薄膜デバイスにおいてトランジスタ特性を示さなかったため,「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」に従い,BTBT(OH)_2を電子ドナーに用いた水素結合型有機伝導体を開発した.その結果,金属的挙動を示す電荷移動塩beta-[BTBT(OH)_2]_2ClO_4が得られた.結晶構造,電子構造,電気伝導性,磁性について調査することで,水素結合相互作用に基づく構造―物性相関を考察した. また,有機トランジスタ材料として,弱い水素結合官能基を対称・非対称型に導入したBTBT誘導体(BTBT(OMe)_2およびBTBT(OMe)_4)を開発した.置換基同士の水素結合形成と立体効果に基づいて分子凝集性が変化することが結晶構造解析から明らかとなり,薄膜デバイスにおいてトランジスタ特性に明瞭な差異が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素結合能を有する多置換型BTBT系有機半導体の合成手法を確立した. 新規有機伝導体の開発と有機トランジスタへの応用を行い,水素結合形成に基づく構造―物性相関について基礎的な知見が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得た知見をもとに,水素結合型BTBT系有機半導体の合成を基盤として,新規有機伝導体の開発を行うとともに,単結晶トランジスタの評価と界面物性の開拓を行う.
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