研究課題/領域番号 |
15H06143
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金 雄杰 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00761412)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 担持金属触媒 / 分子状酸素 / 脱水素反応 / 脱水素型クロスカップリング反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、担持金属触媒による酸素を酸化剤とした新規脱水素酸化反応及び脱水素型クロスカップリング反応の開発を目的とした。本年度は、申請者のこれまでの知見に基づいて、主に(1)担持金ナノ粒子触媒の選択脱水素酸化能を利用した2'-hydroxyacetophenoneとbenzaldehydeからのワンポットフラボン合成、及び(2)担持金-パラジウム二元金属ナノ粒子触媒による脱水素芳香環形成反応を鍵とするアニリン類の合成に成功した。具体的には、金ナノ粒子触媒を塩基性層状複合水酸化物であるMg-Al LDHに担持した触媒が金ナノ粒子とLDHとの相乗効果により様々な2'-hydroxyacetophenoneとbenzaldehydeから高い収率で対応するフラボンを与えた。また、金-パラジウム合金ナノ粒子をアルミナに担持した触媒を用いると、空気を酸化剤としたシクロヘキシルアミンのself-condensationによるN-alkylanilineの合成が可能であった。この反応において、金或いはパラジウムのみをアルミナに担持した触媒はまったく活性を示さなかった。また、アルミナ担持銅水酸化物触媒を用いると、酸素を酸化剤とした芳香族チオールとラクタムの酸化的クロスカップリング反応により様々なN-acylsulfenamideが合成可能であった。これらの反応はいずれも分子状酸素を酸化剤とし、水のみを副生成物とする非常にクリーンな反応系である。また、従来法と比べ、基質の予備官能基化を必要としない一段合成法であるため、高い合成効率を有している。これらの担持金属触媒は不均一系触媒として働き、触媒はろ過により容易に回収可能であり、触媒は繰り返し再使用可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では担持金ナノ粒子或いは金-パラジウム合金ナノ粒子触媒の炭素-炭素飽和結合の特異的な脱水素酸化能を見出し、様々な新規反応、例えば、2'-hydroxyacetophenoneとbenzaldehydeからのワンポットフラボン合成反応、シクロヘキシルアミンのself-condensationによるN-alkylaniline合成反応の開発に成功した。特に、本研究で見出した担持金ナノ粒子或いは金-パラジウム合金ナノ粒子触媒の特異的な脱水素酸化能はこれまでに報告例がなく、これらを鍵反応とする新規反応の開発が大いに期待できる。また、上記のワンポットフラボン合成反応に関する成果はAngewandte Chemie International Edition誌に掲載されVIP論文に選ばれた。一方、担持金-パラジウム合金ナノ粒子触媒によるN-alkylaniline合成に関する成果はChemical Communications誌に掲載され、Front Coverに選ばれた。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度に得られた知見を基に、担持金ナノ粒子或いは金-パラジウム合金ナノ粒子触媒による炭素-炭素飽和結合の脱水素酸化能のメカニズムを検討し、担体及びナノ粒子構造の最適化を行い、更なる触媒機能の向上を図る。また、金、パラジウム以外の遷移金属に関しても脱水素酸化能の有無を検討する。特に、Fe、Cuなどの豊富に存在する金属と貴金属との二元金属ナノ粒子も視野に入れ、元素戦略の観点からの触媒設計も行う。また、担持金属ナノ粒子触媒の脱水素酸化能を利用した新規反応の開発も行う。
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備考 |
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/mizuno/japanese/
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