研究課題
性腺の維持、卵胞発達や精子形成に必須である性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)パルス分泌制御は視床下部弓状核に存在するKNDyニューロンが担っている。しかし、KNDyニューロンが分泌する抑制性神経伝達物質であるダイノルフィンの標的細胞は不明である。それゆえ、本研究ではダイノルフィン受容体であるκオピオイド受容体(KOR)を発現する神経細胞の実態を明らかにすることを目的とした。平成27年度は、本研究で使用する予定であるKOR標識トランスジェニックラットが使用できるか標識特異性の検討とVenus陽性細胞の細胞特性の同定を行った。このトランスジェニックラットはKORプロモーター制御下で蛍光タンパク質Venus遺伝子が発現するように作成した。Venusの発現は大脳皮質、室傍核、背内側核で高く、弓状核、中脳後脳境界においても確認された。これらのVenus陽性細胞の細胞特性を同定するため、細胞マーカータンパク質に対する抗体を使用した免疫組織化学二重染色法を用いて解析した。初めにVenusと神経細胞マーカーNeuNとの免疫二重染色を行った。VenusとNeuNは共局在していることが明らかになり、Venusは神経細胞に発現していることが判明した。次に、Venusとキスペプチン(Kiss)の免疫二重染色を行った。その結果、VenusとKissは異なる細胞に局在していた。先行研究でKissニューロンにはKORが発現していないことが明らかになっている。これらのことから、Venus発現特異性の一端を確認できた。これに加えて、VenusとERαの免疫染色を行った結果、VenusとERαは共局在していないことが明らかになった。この結果は、KORニューロンが関与する生殖系のフィードバック調節では、KORニューロンが直接的に末梢の女性ホルモンの情報を受け取って行っているのではなく、KNDyニューロンからの情報をKORニューロンが受け取ることにより、フィードバック調節がおこなわれることを示唆している。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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