副腎白質ジストロフィー(Adrenoleukodystrophy:ALD)は、ABCD1を原因遺伝子とするX連鎖性劣性遺伝性疾患であり、時に副腎不全を認める。多彩な表現型を認めることが特徴であり、複数の症例を有する家系内でも異なった表現型を呈することがあり、遺伝子表現型連関を認めない。予後不良な大脳型においては造血幹細胞移植が症状の進行停止に有効であることから表現型を規定する因子を同定することは臨床上も重要となる。ABCD1の遺伝子発現産物はペルオキシソームで機能することから、表現型を規定する修飾因子としてペルオキシソームに局在する遺伝子群に着目した。 ALD81症例、コントロール503例のexome解析結果から、ペルオキシソームに局在する98の遺伝子群の中で既知の病因遺伝子変異、dbSNP134/135に登録のない新規のナンセンス変異、スプライスサイト変異、フレームシフト変異、ミスセンス変異を抽出して、サンガーシークエンスにて偽陽性の変異を除外の上表現型毎に比較を行った。 予後不良である大脳型においては48症例中22症例(45.8%)で上記変異を認めた。下肢の痙性のみを認めるAdrenomyeloneuropathy症例では23症例中12症例(52.2%)で上記変異を認めた。コントロールでは503例中279例で上記変異を認めた。今回の解析結果から、ペルオキシソームの機能に影響を与え得る変異が多く抽出されることが判明した。今回の解析では表現型毎に明らかな差を認めていないものの、大部分はミスセンス変異であることから、予測機能アルゴリズムや得られた変異の機能解析を加味して検討を行うことも、今後重要であると考える。
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