研究課題
長鎖non-coding RNA の一つである環状RNA(circRNA)は真核細胞内に数多く存在することが知られているが、数個の例外を除いてその機能は殆ど未解明である。circRNAの生成にはイントロン内のリピート配列が重要であることが示されている。他方、遺伝性神経変性疾患の一部はゲノム内の主要なリピート配列であるAlu に関連したmicrosatellite の異常伸長(expSat)が原因変異であることが知られている。脊髄小脳失調症31 型(SCA31)はこの疾患群の一例であるが、本研究ではSCA31を例に、イントロン内のAluから生じたexpSatがcircRNA 生成・分布・代謝に与える影響を疾病モデルとヒト脳剖検組織検体を用いて検討し、circRNAの生成とその疾患における役割の一端を明らかにすることを目指した。SCA31変異が存在するBEAN1, TK2遺伝子由来のcircRNAをヒト小脳検体、ヒト変異型BEAN1トランスジェニックマウス脳検体を用いて検出することを目指した。circRNAのデータベースを参照しつつ、RT-PCR法により探索を行ったが非特異的増幅が多く、BEAN1或いはTK2由来のcircRNAと結論づけられる配列は検出されなかった。この原因としては(1)BEAN1/TK2由来の環状RNAはごく微量であること、(2)BEAN1遺伝子はGC richであり増幅されにくいこと、などが考えられた。筆者はin vitroの系でSCA31変異の転写産物が結合するタンパク質を複数同定した。これらは主にRNA代謝に関わるタンパク質であり、神経変性に重要であることが知られているものも含まれていた。circRNAの一部はmRNAと競合的に生成されることが知られており、SCA31においてこれらのタンパク質のcircRNAの生成量が変化するかを検討している。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuron
巻: 94 ページ: 108-124
10.1016/j.neuron.2017.02.046.