研究課題
分類不能型免疫不全症の疾患責任遺伝子の探索については、既知遺伝子として報告があるNFκB2欠損症については新規症例を同定した。国内他大学症例とも情報共有し国内症例の把握を進めている。同時に新規症例については患者細胞株の作製を行い、発現解析および下流シグナル異常の検出を目的とした解析の準備を開始した。EBV関連疾患症例では抗体産生不全症の病態が前面にでて分類不能型免疫不全症に分類されている場合が多い。したがって遺伝子解析をおこない、以前にDNA修復応答異常症(Fanconi貧血など)と関連がある可能性がわかってきていたが、今回以前に行っていたExome結果を検討したところ、NFκBシグナル(NFκB2やNFκB1の変異症例やその他の新規遺伝子変異の可能性)にも関連がある可能性が示唆され一部解析をすすめている。特にNFκBシグナルについては、解析を行うための抗体などの準備を開始した。たとえば転写因子であるNFκBとの結合をゲルシフト法(EMSA)で検出するためのプライマーの準備、その他NFκB2蛋白発現解析および下流のリン酸化シグナル異常を検出するための抗体(RelB、p100/p52、p100 S866/870)の準備を開始した。その他抗体産生異常症症例については、細胞表面抗原解析および遺伝子解析等によりX連鎖性重症複合免疫不全症(IL-2R遺伝子のmissense mutation)と判明し、ロタウイルスワクチン株の持続検出などもみとめた稀な症例について学会および研究会等で報告した。(経口ロタウイルスワクチン株の持続排泄を認めたX連鎖重症複合免疫不全症の一例. 第47回小児感染症学会 2015.10.31福島など)
3: やや遅れている
既知報告のある遺伝子変異症例について、特にNFκB2に関しては実際の蛋白発現解析等の準備をすすめられたが実際の解析結果が得られていない点が、進行状況がやや遅れている理由として挙げられる。本研究以前に行っていたExomeの結果の見直し、NFκB2以外の既知遺伝子変異例また候補遺伝子変異例についての解析状況が不十分である点も、今回やや遅れていると評価した理由として挙げられる。本研究の大きな課題でもある、分類不能型免疫不全症の病態と抗体産生のメカニズム、悪性腫瘍や自己免疫疾患・特殊なウイルス感染症などとの関連について検討するまでの解析が進められていない点で、進行状況の遅れがあると判断した。一方で抗体産生異常症という観点からでとらえることで、既知の疾患の稀なphenotypeの抽出、抗体産生のメカニズムについての検討などに研究の幅を広げることができた点では、評価できると考えている。
引き続き、これまでの全エクソン解析の結果に基づき、疾患責任遺伝子の有力な候補をしぼりこみ、機能解析を要すると考えられる分子を抽出することと、現時点で同定している稀な(世界でも1~数症例報告)既知遺伝子変異例の解析を行うこと、以上を並行して検討していきたいと考えている。1例同定しているNFκB2変異例は新規の変異部位であり、患者細胞株を用いたウエスタンブロッティングによる発現解析等を行って、報告することを目標にしている。具体的にはコントロールと患者の末梢血より樹立した細胞株を用いて、NFκB2蛋白発現解析および下流のリン酸化シグナル異常を検出する(抗体:RelB、p100/p52、p100 S866/870)実験系を計画している。国内におけるNFκB2変異症例のまとめについては、他大学とともに論文化をすすめており、学会発表および論文化を行いたい。特徴的な臨床症状、なかでもEBウイルス感染症と関連した抗体産生不全症(分類不能型免疫不全症)症例について、これまでのExome結果を見直すことで、数症例で遺伝子変異を同定してきており、今回も引き続き臨床症状や遺伝子解析結果を見直し、新規の疾患責任遺伝子の同定を目標としている。これにより解析候補遺伝子または分子が同定できた場合には、変異解析のためのmutant vectorの作成と変異vectorの導入、ウエスタンブロッティングやフローサイトメトリーによるタンパク発現解析等、さらにはsiRNAを用いた遺伝子Knock down等による分子の機能解明も目標にしている。
すべて 2016 2015
すべて 学会発表 (2件)