電解液/電極界面は電気化学反応場を構築する重要なナノ領域であり、近年既存モデルで説明できないイオン吸着・脱離挙動の電位応答ヒステリシスが注目を集めている。本研究はイオン液体を電解液に用いて電気化学測定・赤外-可視和周波振動分光(IV-SFG)・光電子分光を相補的に活用し、ヒステリシス挙動とイオン-電極間相互作用の相関を解明することでヒステリシスを説明する新規概念モデル構築を目指す。27年度は下記に示す通り主に(1)膜厚制御可能なイオン液体薄膜成膜技術の確立、(2)光電子分光を用いたイオン液体/電極界面の電子構造の計測、(3)IV-SFGを用いたイオン液体/電極界面の吸着構造の計測を図った。 (1)既存の蒸着装置にてイオン液体成膜を試みたが、真空槽内を汚染する問題が生じた。そこで、新規イオン液体蒸着槽の設計・開発を行い、現在組み立てを行っている。 (2)イオン液体塗布基板の光電子分光計測を試み、電子構造評価が可能であることを確認した。今後は上記蒸着槽を用いて電極界面の電子準位接続及び界面双極子の評価を行う。 (3)様々なイオン液体の電極界面における吸着構造を計測し、そのヒステリシス挙動はイオン種依存性を有することが分かった。また、希釈電解液系ではヒステリシス挙動の強い電解質濃度依存性を見出した。これは拡散層のイオン配列構造がイオン吸着構造に大きな影響を与えることを示唆する。今後はヒステリシス挙動のイオン種・電解質濃度依存性を精査し、既存モデルとの差異を検討することでヒステリシスを説明可能な新規モデル構築を試みる。 上記において、(3)は様々な電気化学デバイスの機能性が図らずもヒステリシス挙動に影響されている可能性を示す重要な成果と考えられる。今後は電気化学測定・光電子分光からイオン-電極間相互作用の情報抽出を行い、より普遍的で自己無撞着なモデル構築を目指す。
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