本研究の目的は、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)を用いたゲート絶縁膜技術を確立し、新機能を有するナノ電子デバイス開拓に向けた異種材料の界面設計を行うことである。本年度は、前年度に確立した作製プロセスを用い、作製した電子デバイスの特性を評価した。SAMとMoS2はどちらも表面にダングリングボンドがない不活性な閉じた構造をしている。SAMを吸着させたAlOx絶縁膜上にMoS2を転写したFETの界面特性は、ヒステリシスが無く、サブスレッショルドスロープも小さい値を示した。一方、MoS2をAlOx絶縁膜上に転写したデバイスは、非常に大きなヒステリシスを示したことから、SAMが界面特性の向上に重要な役割を果たしていることが分かった。これによりSAMによる界面設計の優位性を示すことができたと考えている。また新たにSAMを用いた自己整合的なパターニング手法を確立しFET作製に応用した。SAMを吸着させた材料表面は、疎水性を示し材料の密着性が著しく低下する。この特徴を用いて、SAM表面に堆積した金属を選択的に除去することで、ナノスケールの溝を有する異種金属の電極を作製することに成功した。この自己整合的に作製した金属電極上にMoS2を転写することによって、FETの作製と特性評価を行った。素子特性は良好な結果を示し、さらにMoS2転写後の熱処理によってヒステリシスが無くなることが分かった。本実験結果により、2次元材料系を用いた界面設計の指針を示すことができたと考えている。
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