研究課題
本研究では、数十秒周期で明滅する脈動オーロラに伴う、中間圏・下部熱圏の電子密度、ナトリウム密度の変動を秒オーダーのリモートセンシング観測によって捉え、その時間変化をコントロールする化学過程を観測的・理論的に明らかにする。これにより、太陽風エネルギーの入力に伴う、地球大気の化学的応答の素過程、特にその反応の時定数に関する定量的な理解を得ることを目指す。本研究の初年度には、ナトリウムライダーの高時間分解能化を行った。2015年9月までのナトリウムライダーの時間分解能はナトリウム密度観測で最速で5秒であった。2015年10月から12月に電気通信大学でのナトリウムライダー制御プログラムの改良及び、動作実験を実施した。その結果、当初目標としていたサブミリ秒(0.2秒)での観測が可能となった。本システムを1月にトロムソに渡航し、現行のナトリウムライダーシステムに組み込んだ。トロムソでの観測では0.2秒での観測には成功したものの、観測データと観測情報データ(周波数、レーザーパワー等を記述)が同時に保存されない事例が確認された。この問題は、来年度に観測プログラムを修正または、不正なデータだけを取り除くプログラムを作成することで解決できる見通してある。また、今年度は当初、次年度に行う予定であったEISCATレーダーとの同時観測も前倒しで、本年度に行った。この観測はEISCAT VHFレーダー、UHFレーダーの高速観測に加えて、フィンランドのKAIRAシステムとの同時観測キャンペーンと時期を合わせる形で行った。この結果は現在解析中である。これらの研究成果を国内学会・研究集会で3件の発表を行った。現在、学術論文としてまとめていて、次年度中に提出予定である。
2: おおむね順調に進展している
ナトリウムライダーの高速観測システムの開発が予定していた分解能まで向上できたこと、次年度行う予定であったEISCATレーダーとの同時観測を今年度中に執り行うことができたことなど、当初の予定のほとんどを達成することができた。しかし、データ保存に関して、多少の改善の余地が見られることから、「おおむね順調に進展している」とする。
最終年度である2016年度は、2015年度に取られたデータの解析と、高速観測システムの修正を行う。2016年3月にはEISCATレーダーとの同時観測を実現しており、同観測期間中に脈動オーロラも発生している。これらの観測データの解析結果を2016年5月に開催されるJpGU連合大会で発表予定である。夏は主に、2015年度で見つかった高速観測システムの問題点を洗い出し、修正をする。この修正は電気通信大学の津田卓雄助教と協同して行う予定である。また、7月にはスウェーデンで開催されるレーダースクールに参加し、これまで知識の浅かったEISCATレーダーに関しての知識を深め、より深くから運用、データ解析を理解する。秋をめどに学術論文をまとめ上げ、提出する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Geophysical Research Letters
巻: 42 ページ: 9190-9196
doi:10.1002/2015GL066411