平成28年度には、国際学術雑誌の編集者および査読者から得られたコメントをもとに、平成27年度に投稿していた本研究成果をまとめた論文の大幅な改訂と新しい研究成果の追加を実施した。 具体的な実施内容は次の2点に要約される。 第1に、回帰不連続デザインの二値処置変数が測定誤差を含む場合の問題点の解明とその解決手法の開発を行った。まず、二値処置変数の測定誤差は処置変数の真値と必ず依存関係にあるため、回帰不連続デザインの標準的な推定量は政策効果を識別しないという問題が発生することを示した。その解決策として、本研究では共変量・操作変数・繰り返し観測値などの追加的な外生変数が存在することを仮定したうえで、局所的なモーメント条件にもとづく政策効果の新規識別結果を証明した。政策効果の推定方法としては、局所的なモーメント条件にもとづく局所線形一般化モーメント推定量を提案し、その統計的な性質を導出することに成功した。具体的には、当該推定量の一致性および漸近正規性を証明した。さらに、当該推定量の漸近正規性にもとづく、政策効果の信頼区間推定などの推論方法の考察も行った。 第2に、モンテカルロ計算機実験の追加および改訂を実施した。上述の新規開発手法の現実的なパフォーマンスを評価するためのシミュレーション実験を行うとともに、平成27年度に実施していた回帰不連続デザインの割当変数の測定誤差の影響を評価するためのシミュレーション実験を修正した。これらのモンテカルロ計算機実験は平成28年度末時点でも実施中であるため、これらの実験が完了次第、本研究成果をまとめた論文を再投稿することを予定している。
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