研究課題/領域番号 |
15H06216
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
渡辺 周 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (90754408)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 経営学 / 経営戦略 / 経営組織 / 経営者 / 経営陣 / 撤退 / コミットメント・エスカレーション |
研究実績の概要 |
平成27年度は,社外取締役の人数など企業内で経営者を評価・監視する体制が,撤退の意思決定に与える影響について検討してきた.当初の計画通りに進捗していないにもかかわらず適切な時期にその撤退が決断されないコミットメント・エスカレーションが起こる要因として,既存研究は,主に意思決定者個人の心理的な要因に注目し,実験研究で分析してきた.これに対し本研究は,銀行の不良債権処理という実際のデータを用い,意思決定者をとりまく周囲の構造が与える影響を検討するものである. このために平成27年度に行った活動は,以下の2つに大別される.第1に,理論的な検討である.具体的には,撤退の決断を含む企業の戦略的意思決定に,経営者や経営陣の構成が与える影響に関して検討を行っている既存研究のレビューを行った.レビューでは,企業の戦略的意思決定の差異を,認知や情報処理に影響を与える経営者や経営陣の価値観やパーソナリティ,経験によって説明しようとしてきたアッパー・エシェロンズ・パースペクティブと呼ばれる領域の研究を大きく2つに整理し,今後の研究課題を導出した.この研究成果の一部は,一橋商学論叢に査読付論文として掲載されている. 第2に,データセットの構築と実証分析である.銀行の不良債権処理に関するデータやその経営者や役員に関するデータを収集の上,分析を行った.その分析結果については,日本経営学会で発表を行っている.また,そこでのフィードバックにもとづき,リサーチデザインの再設計と,追加的なデータ収集を行った上で,再分析を行い,その成果を査読付学術誌へ投稿した他,ワーキングペーパーとして既に公表している. 以上のように, 当初の予定通り, 本研究課題遂行に必要な文献レビューとデータセットの構築と実証分析を行い,その成果を公表したというのが平成27年度の研究活動である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,当初の計画における流れに沿って作業を進めることが出来,またその結果,理論的な研究成果の一部を一橋商学論叢で,実証的な研究成果の一部を日本経営学会で発表することが出来た.また,まだ審査中ではあるものの,既に実証的な研究成果についてもその一部をワーキングペーパーとして公表の上,査読付学術誌へ投稿済みである.そのため,おおむね順調に研究が進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度も,当初の計画通り,経営者を評価・監視する体制が,撤退の意思決定に与える影響について検討を続けていく.平成27年度は,経営者を評価・監視する体制として,社外取締役など組織内の意思決定者の周囲の構造に注目した分析を行ってきた.平成28年度は,この分析について必要に応じてさらに精緻な検討を行うことの他,意思決定者をとりまく周囲の構造として組織内だけでなく組織外の要因が与える影響について検討していくことになる. ただし,この作業において,当初の計画では使用する予定であったいくつかのデータベースが,平成28年2月に研究代表者が転任したことにより利用が出来なくなっている.代替的なデータベースはいくつか存在するため,研究の推進にあたって問題はないものの,そのうちいずれを用いるべきかについては早期に検討を行う必要がある.これ以外の点については,これまでおおむね順調に研究が進展しているため,当初の計画通り研究を推進していく.
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