研究課題/領域番号 |
15H06231
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
長谷川 佑介 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 講師 (40758538)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 語彙習得 / 英語教育 / 意図的語彙学習 / 付随的語彙学習 |
研究実績の概要 |
外国語学習を成功させるためには,コミュニケーションの根幹をなす語彙を効果的に習得することが不可欠であり,異なる学習方法を効果的に統合した英語語彙指導の在り方が求められている。本研究では,いわゆる暗記学習によって断片的に得られた知識を文脈的インプットによって豊かにしていくプロセスをSLA研究に基づいて考察するとともに,その学習効果の適切な測定方法について検証することを目的とする。1年目の研究では,英語を外国語として学ぶ大学生を協力者とした実証実験を行った。協力者はなじみのない英単語(目標語)とその訳語のリストを学習し,その際に平易な英語で書かれた例文をあわせて読解した。このような文脈的インプットを伴う対訳型暗記学習を行った直後に,新たな英文を協力者に提示し,その文中に含まれる目標語の意味を解釈させる課題を実施した。その結果,目標語の意味を適切に想起して解釈できる割合は先行研究で仮定されていたよりもやや低く,学習者にとって新たに獲得した知識を新たな文脈に当てはめることが困難であることが示された。一方,その1週間後に目標語の意味を想起させるテストを実施したところ,協力者は一部の目標語の意味を正しく記憶することができていた。正しく想起できた項目とそうでない項目に関する分析を行ったところ,対訳型暗記学習の際に協力者にとってイメージしやすい例文(高心像性文脈)が与えられていた場合に限り,1週間後のテストでも協力者はその例文の内容とともに目標語の語義を想起していたことが明らかになり,文脈的インプットが心内でどのように処理されるかによって学習効果が異なる可能性が示された。今後は,文脈内で語彙を学習する際に文脈から構築される心的イメージと目標語の意味概念を結びつけるプロセスがどのように起こっているのかを心理言語学的な手法を用いて検証する必要があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英語語彙の潜在力を高める文脈的インプットの効果を検証するとともにその測定方法を提案するという研究全体の目標を達成するために,当初の計画を一部修正して研究を行った。具体的には,従来の研究で伝統的に行われていたタイプの語彙テストを実施する代わりに,Webb(2009)を参考に文脈の中で英単語の意味を解釈させるようなテストを実施し,語彙知識と文脈情報との相互作用を示唆する結果を得ることができた。研究成果は国内学会での口頭発表および査読つきジャーナルへの掲載という形で公表した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,1年目の研究では紙面テストによる明示的知識の検証を行い,2年目の研究ではコンピュータ画面上での暗示的知識の検証を行う。ただし,当初の計画では2年目の研究において暗示的知識の測定を行うために意味的プライミングと呼ばれる手法を用いることを想定していたが,1年目の研究成果に基づき文脈情報の記憶が反映されるような応用的手法を用いることが必要になる可能性がある。
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