研究実績の概要 |
本年度は、科学哲学における先行研究のリサーチを念頭に、日本においてこれまで言及されることの少なかった下記の3文献を中心に頑健性という概念の分析・モデル構築を行った。(1) Soler (eds.) (2012) Characterizing the Robustness of Science: After the Practice Turn in Philosophy of Science, Boston Studies in the Philosophy and History of Science, Springer この文献では、科学の諸分野におけるケーススタディから、頑健性概念の多様な使われ方が研究されている。 (2) Weisberg, M. (2013) Simulation and Similarity, Oxford University Press モデルの理想化という観点から、シミュレーションにおける頑健性が検討されている。 (3) Hudson, R. (2013) Seeing Things: The Philosophy of Reliable Observation, Oxford University Press 3つのケーススタディを基に、様々な科学的研究対象の観察における頑健性の役割について検討している。
これらの先行研究の分析により、科学的実在論の奇跡論法について、既存の議論とは違う形での擁護が可能かどうかを検討中である。特に(3)においては、科学哲学者が頑健性を過剰に評価しているという考察が提示されており、本研究を進めていく上での重要な示唆が得られた。
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