研究課題/領域番号 |
15H06243
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高橋 史樹 信州大学, 先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所, 助教(特定雇用) (40754958)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 電気化学発光 / 覚せい剤 |
研究実績の概要 |
薬物の乱用は依然として我が国の大きな社会問題の一つであり、検体数の増加に伴い分析の簡便化、迅速化が大きな課題となっている。本研究では、電気化学発光(Electrochemiluminescence、ECL)法を用いて、トリス(2,2'-ビピリジル)ルテニウム錯体[Ru(bpy)32+]をECLプローブとして用いた際の、覚せい剤であるメタンフェタミン(MA)とその類似化学種のECL反応についての反応機構の解明、並びに簡便なスクリーニング分析法の開発を行っている。 先ず、平成27年度はECL計測のための再現性の高いマイクロECLシステムの設計・構築を行った。正確な電極電位の制御および電気化学応答計測を行うための電気化学アナライザ(八光電機社 IGS1030)を本補助金により購入した。また、電極表面からの微弱発光を測定するための光電子増倍管(浜松ホトニクス社 H11901-01)、定電圧電源(C10709)およびアンプユニット(C7319)を本補助金により購入し、組み合わせることで微弱発光計測モジュールを構築し、使用した。その結果、メタンフェタミン(MA)に[Ru(bpy)32+]に対するECL活性があることが確認され、そのECL反応機構の解明を行った。さらに、電位の印加方法を工夫することで、代表的なMAの類似化学種を区別して検出できることが確認され、MAのスクリーニング法としての提案が行われた。 電気化学およびECL挙動の二つの独立した変数による多変量解析法を開発し、選択的な検出法としての展開を試みるため、現在、それぞれのECL系における反応機構の詳細なキャラクタリゼーションを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の記載のとおり、覚せい剤であるメタンフェタミン(MA)に対してECL法を用いることで、類似化学種と区別して検出できる可能性が示唆された。現在、MAとRu(bpy)32+系のECL反応機構の解明を行ったところ、ECL挙動と電気化学挙動を詳細に比較することで、MAと数種類の類似化学種との選択的検出について、Ru(bpy)32+系のECLプローブのみで行うことができることが確認されている。当初予定していた量子ドットをECLプローブとした確認試験が不要である新しいECL検出システムが考案され、現在研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、提案したECLによる覚せい剤スクリーニング法を実際の試料への分析に応用する目的で、ディスポーサブル可能なフィルム電極を開発し、ポータブルECLスクリーニング分析システムの構築を行う。Ru(bpy)32+を固定化した修飾電極、又は電極材料と混合した機能性電極をガラス基板に作用電極として固定化する。対極はカーボンインク又は白金インク、並びに参照電極は銀/塩化銀インクを用いることで、簡便な測定が可能なECLチップを製作する。そして、作製したECLチップを用いて、冷却CCDカメラ(ビットラン社 BU-51C)により微弱発光の検出を行い、発光のパターンから覚せい剤スクリーニングを迅速に判定できるシステムの構築を行う。なお、冷却CCDカメラは簡便なECL検出システムに組み込むことが可能である一方、感度面で十分ではない可能性があるため、電極表面からの微弱発光を集光する光学系を設計するとともに、露光時間等の最適条件の検討を行う。 製作したECLチップを用いて、覚せい剤の一次判定に適用するため、実際に覚せい剤を添加した模擬試料を用いて検証する。この検査の判定キットは量産化および良好な再現性が期待でき、簡便でコンタミネーションを防止したディスポタイプの現場分析法としての確立を目指すとともに、結果を取りまとめ学会発表および論文発表を行う。
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