研究課題
リポポリサッカライド(以下LPS)の硝子体内注射による炎症誘導が過剰な炎症を惹起し評価が困難であったため、足底注射による炎症誘導による評価を試みた。足底注射では硝子体内注射とは逆に炎症の所見はごく軽微にとどまり、いずれの個体にも結膜毛様充血を軽度認めるものの、前房内の炎症性細胞を認める個体は少なく、眼底観察による網膜血管の滲出性変化を認める個体は極めて稀であった。LPS投与量を増量して再検を行っても全個体の網膜血管病変の誘導は得られなかったため、LPS誘導ぶどう膜炎モデル以外での解析を検討した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(以下CGRP)ノックアウトマウス(以下CGRP-/-)を用いた解析として、塞栓糸による中大脳動脈塞栓術を用いた急性脳虚血モデルによる解析では、レーザードップラーによる血流評価においてCGRP-/-は脳虚血後の再灌流遅延を認めた。病理所見では脳虚血後の神経細胞の減少とアポトーシスの亢進がCGRP-/-ではWTと比較し顕著であった。またCGRP-/-では脳虚血後の大脳皮質と海馬でのサイトカイン発現もWTに比べ亢進していた。これらの結果から、CGRPの虚血時における神経保護作用が示された。またCGRPのファミリーペプチドであるアドレノメデュリン(以下AM)とその受容体蛋白における解析では、網膜内で血管内皮増殖因子(以下VEGF)を発現することで網膜虚血と透過性亢進が誘導される、糖尿病網膜症モデルマウスであるKimbaマウスにAMを投与することで、全身投与と硝子体内投与いずれにおいても網膜血管の透過性亢進が抑制された。さらに全身投与では網膜毛細血管の脱落と異常血管形成も抑制された。網膜血管内皮細胞を用いた解析では、VEGF投与により誘導される炎症と透過性亢進がいずれもAM投与により抑制された。これらの結果からAMの糖尿病網膜症における治療的効果が示された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
American journal of Pathology
巻: 187(5) ページ: 999-1015
10.1016/j.ajpath.2017.01.014