研究課題
初年度は、健常人の末梢血、患者保存骨髄細胞を用いて活性化T細胞を作成し、アリルハイドロカーボン受容体の発現の検討を行い、以下の成果を得た。1)末梢血中のPBMCからCD3/CD28刺激により活性化T細胞を作製した。刺激後7日目のアリルハイドロカーボン受容体(AhR)の発現をフローサイトメトリーで検討したところ、健常人の間でも4.5%~35%と発現量の違いがみられた。そのため、AhRの発現量の違うT細胞を用いて、キヌレニン添加培地中での培養により増殖能を検討したところ、AhR陽性のT細胞の細胞増殖は有意に抑制されたが、AhR低発現細胞は抑制されなかった。つまりヒトの活性化T細胞においてAhRの発現量がキヌレニンによる抑制作用の影響を規定することが考えられた。また、これらのキヌレニンによる抑制作用はAhR阻害剤であるStemRegenin1を用いることで減弱された。2)IDO強制発現リンパ腫細胞株を作成し、T細胞と共培養したところ、AhR陽性のT細胞の細胞増殖は有意に抑制され腫瘍細胞の比率が増加したが、AhR低発現細胞はIDO環境下においても増殖は抑制されなかった。3)次に多発性骨髄腫患者の治療前での骨髄保存細胞を用いて、活性化T細胞の作製を試みたところ11例中9例でCD3+のT細胞のみ増殖させることができた。そして、AhRの発現を検討したところ、3.3%から26.6%まで発現量に違いを認め、その発現は骨髄中の形質細胞の割合と相関を認めた。
2: おおむね順調に進展している
初年度であり計画通りに活性化T細胞を作成し、AhRの発現をフローサイトメトリーで簡便に検出することができた。健常人においてもAhRの発現の差が予想以上に大きく、キヌレニンによる細胞増殖抑制効果を検討することができた。さらに、AhR阻害剤であるStemregenin1を用いてキヌレニンによる細胞増殖抑制作用を阻害できることを明らかにした。また、当初計画になかったが、凍結保存骨髄細胞からも活性化T細胞を作製することに成功し、AhRの発現を調べることができた。多発性骨髄腫では骨髄が腫瘍増殖の環境であり、腫瘍免疫をより反映していると考えられることから重要な指標となる可能性がある。AhRの発現をフローサイトメーターのみでなくmRNAをPCR法で検出し、タンパクをWB法で検出する予定だが、検体をまとめて測定する予定であり本年度は未施行である。第2年度に計画しているAhRノックアウトマウスを用いた実験に使用する、腫瘍細胞株のIDO発現を検討している。
今年度はAhRノックアウトマウスを用いた実験を行う。IDO陽性および陰性リンパ腫細胞をAhRノックアウトマウスおよびWildタイプマウスに移植し、腫瘍の増殖活性を調べることで、宿主細胞のAhR発現がIDO陽性腫瘍の増殖に影響をあたえるかどうかを検討する。それぞれの腫瘍を摘出し免疫染色を含む各種解析を行い、腫瘍内浸潤T細胞の数およびphenotypeを調べる。また、初年度行った臨床検体を用いたAhR発現の検討を継続するとともに、腫瘍細胞のIDO発現、血清キヌレニンとの関係性を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 備考 (1件)
Hematology Oncology
巻: 21 ページ: 1-4
10.1002/hon.2285
Leukemia Lymphoma
巻: 11 ページ: 4-11
10.1371/journal.pone.0146279
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