研究課題
本年度も前年度に引き続き、血液疾患患者の骨髄保存細胞を用いて活性化T細胞を作成し、アリルハイドロカーボン受容体発現の検討を行った。前年度同様に、多発性骨髄腫患者の検体を用いて検討を行ったところ、アリルハイドロカーボン受容体の発現は骨髄中の形質細胞の割合との相関のみではなく、治療開始前の臨床病期とも有意な関係を認めた。つまり、T細胞のアリルハイドロカーボン受容体の発現が高い症例ほど、臨床病期が進行していた。これらの結果は、骨髄中のIDO発現環境下において抗腫瘍免疫の主な役割を担うT細胞が、キヌレニンによる抑制作用を受けやすいのがアリルハイドロカーボン受容体を強く発現している症例であり、骨髄腫細胞が増殖し臨床病期も進行していると考えられた。また、他の血液疾患においても同様の検討を行うことを計画した。しかし、急性白血病患者の骨髄細胞を用いて活性化T細胞の作製を試みたが、骨髄中の腫瘍細胞の割合が多い症例ではその作製は困難であった。保存骨髄細胞中の未熟T細胞が少ないことが原因と考えられた。次にT細胞のアポトーシスに関して、Annexin Vアッセイを用いて検討を行った。アリルハイドロカーボン受容体の発現量の違うT細胞を用いて、キヌレニン添加培地中での培養によりアポトーシスを検討したところ、アリルハイドロカーボン受容体陽性のT細胞では、アリルハイドロカーボン受容体低発現細胞に比較して有意に増加していた。また、このキヌレニンによるアポトーシス誘導作用はアリルハイドロカーボン受容体阻害剤であるStemRegenin1を用いることで減弱された。つまり、T細胞のアリルハイドロカーボン受容体はキヌレニンによる細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導に重要な働きをしており、アリルハイドロカーボン受容体阻害剤を用いることでIDO発現環境下での腫瘍免疫を増強させる可能性が示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Hematological Oncology
巻: - ページ: -
10.1002/hon.2318.
Leukemia Lymphoma
巻: 57(9) ページ: 2208-2211
10.3109/10428194.2015.1128541.
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