研究課題/領域番号 |
15H06248
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
江頭 裕介 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50547677)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 白質傷害 / クモ膜下出血 / 血液脳関門 |
研究実績の概要 |
C57BL/6雄性マウスに対して血管内穿孔法によりクモ膜下出血(SAH)を作成し、SAH後の白質において超急性期(発症後24時間)に血液脳関門の破綻が生じることを確認した。血液脳関門の破綻には特に白質特異的と考えられるアストロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞の活性化およびそれに伴うmatrix-metalloproteinase 9 (MMP-9)の活性化とlipocalin-2の発現上昇が強く関与していることが確認され、MMP-9ノックアウトマウスにおいて亜急性期(発症後8日)では野生型マウスと比較し白質におけるミエリン密度の低下および軸索損傷が軽微であることを報告した。これらの研究成果を論文、国際学会を含む専門学会にて公表した。現在までにddY種雄性マウスに対する血管内穿孔によるSAHモデルを確立し、C57BL/6などの他種と同様に様々な重症度のSAHを安定して作成可能であることを確認した。現在は他種との急性期~亜急性期(発症後24時間~3日)における白質神経傷害の程度や発生頻度の差異について詳細な検討を行っている。また、これまでの検討から白質傷害は生命予後や粗大な神経症状には大きな影響を及ぼさないことが確認されている。他の脳卒中病型における基礎および臨床研究結果と同様に罹患後中長期の認知機能に影響を及ぼす可能性が推定されるため、主にこの点を中心に中長期評価(罹患後7~28日)を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ddY種のマウスを用いたSAH後の白質傷害についての基礎検討を進めている。SAHによって引き起こされる神経傷害や予後が遺伝的背景によって大きく異なることがごく最近報告された(D’Abbondanza JA: J Cereb Blood Flow Metab. 2015)。このため、まずはこれまで用いていたC57BL/6種とddY種との白質障害の発生頻度や程度の相違の有無について検討を進めているところである。ddY種においてもこれまでの結果と同様に安定した白質傷害が発生することが確認でき次第、薬剤を用いた白質傷害の軽減効果の有無についての検討を行う予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討から、白質傷害の発生、進展に血液脳関門の破綻が関与していることはほぼ疑いない。候補としている治療薬剤はこれまでに多くの脳卒中に対する基礎研究において血液脳関門の安定化やMMP-9の活性化抑制作用が示されており、SAH後の白質傷害に対しても有望な治療候補薬剤と考えられる。このため、前項の課題が克服された場合には順調に研究を進められるものと考えている。
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