研究課題
我々は非症候群性遺伝性難聴家系の原因遺伝子がNLRP3であることを明らかにした。現在までにNLRP3は全身性自己炎症性疾患であるクリオピリン関連周期熱症候群の原因遺伝子であることが同定されており、本疾患の患者では機能獲得型変異により自然免疫担当細胞から恒常的にInterleukin-1β(IL-1β)が分泌されるために全身性炎症が生じると考えられていた。本家系の患者では難聴以外に臨床症状がなかったため、NLRP3の機能獲得型変異により全身性炎症の一部症状として蝸牛のみに炎症が生じているとは考えにくい。そこで我々は、蝸牛内に組織マクロファージが存在し、それらの細胞でIL-1βが分泌されたために蝸牛局所に炎症が惹起され非症候群性難聴が生じたという仮説を立てた。本研究では、この仮説を証明することを目的とした。これまでに、マクロファージ特異的な抗体を用いて、マウス蝸牛内に組織マクロファージが存在することを明らかにした。また、マウス蝸牛内の組織マクロファージにNLRP3インフラマソームを構成する蛋白質(NLRP3, ASC, Pro-caspase-1, IL-1β)のmRNAが存在することをRT-PCR法にて明らかにした。またこれらの蛋白質のmRNAの経時的な変化をQuantitative-PCR法により評価した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、マウス蝸牛内に組織マクロファージが存在するか、マウス蝸牛内の組織マクロファージにNLRP3インフラマソームを構成する蛋白質(NLRP3, ASC, Pro-caspase-1, IL-1β)が発現しているか評価することを目的としていた。平成27年度中にこれらの項目について実験が終了しており、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
平成28年度は、組織マクロファージにおいてNLRP3インフラマソームが活性化されるか、さらに蝸牛内においてIL-1βの下流の炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8)が上昇するか評価する予定である。
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