研究実績の概要 |
p進微分方程式の解の漸近挙動に関するChiarellotto-Tsuzuki予想の検証をすることが目的である. そのために, Chiarellotto-Tsuzuki予想の弱い版の証明をした, 応募者のプレプリント(arXiv:1502:03804)の手法の改良の余地について考察した. この手法は, Frobenius構造付き微分方程式という2つの構造を持つ対象から, 1本のFrobenius方程式を導出し, そのFrobenius方程式の解を調べるという階数2の場合のChiarellotto-Tsuzukiの手法の高階版である. まず, 微分方程式の階数が3や4などと低い場合に考察し, 問題の複雑さは階数の大きさではなく, 異なるgeneric Frobenius slopeの個数に依存することがわかった. また, 問題の本質的な部分は, generic pointでの微分方程式の有界な解が存在するという条件を, Frobenius方程式に反映させる部分であることが判明した. どのように反映させればよいかを考察するために, generic Frobenius slopeがすべて異なっている場合である, Calabi-Yau hypersurfaceのDwork族に付随するGauss-Manin接続の場合に計算している段階である.
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今後の研究の推進方策 |
上で述べたように, Calabi-Yau hypersurfaceの族に対応するp進微分方程式(Gauss-Manin接続)Dy=0に対し, Chiarellotoo-Tsuzuki予想を検証する. Dyの最小のFrobenius slope sが0になる点は, Hasse invariantを使って記述されることがJ.Yuにより証明されている. Dy=0に対するChiarellotto-Tsuzukiの強予想で問題になるのは, sが0でない場合である. そこで, sが0でない具体的な点をとり, Yuの手法を参考にしFrobenius Newton polygonを計算し, また, Dworkがn=2の場合に開発した手法を参考にしlog-growth Newton polygonを計算をし, 両者が一致することを確かめる予定である.
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