本年度は、単位開円板上のFrobenius構造付きp進微分方程式に対する解の増大度に関する、Chiarellotoo-Tsuzukiの予想に関する研究をおこなった。基本的なアイデアは申請者によるChiarellotoo-Tsuzukiの弱い予想に対する、よいcyclic vectorを構成するアプローチ(2017、Adv. Math.)を精密化することである。T. Nakagawa(2013、Tohoku)の論文に、増大度の決定に関する、cyclic vectorの固有方程式がみたすべき十分条件が書いてあり、これをヒントにし、あたえられたp進微分方程式のgeneric fiberのFrobenius構造に条件を設定し、この仮定のもとで階数3の場合には増大度が決定できることを証明した。 問題はこの条件をどのような例がみたすか、どのくらい強いのか、ということであるが、この問題に答えを見いだすことはできなかった。当初はこの条件は一般のFrobenius構造付きp進微分方程式がみたしていることを期待していたが、generic fiberに条件を課したさいに、もとのp進微分方程式がどのぐらい存在するかを決定することは難しく、この点を克服することが今後の課題である。また、高い階数に対する一般化においても証明が機能するかチェックする時間的余裕とれなかった。階数の高い場合にも同様の条件は考えられるが、技術的に複雑になることが予想される。これらの成果をまとめる時間がとれなかったことも心残りである。
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