研究課題/領域番号 |
15H06273
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大井 崇生 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60752219)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 植物 / ストレス / 生理学 |
研究実績の概要 |
作物の耐塩性向上に向け、葉内の過剰塩分を排出する塩腺として働く小毛を増加させる形態形成機構の解明に取り組む。この小毛と食害抵抗に寄与する大毛は共通の起源から分化し、両者の数は植物ホルモンを介して互いに拮抗して増減すると考えられている。 本研究では、耐塩性イネ科牧草ローズグラスを対象に、未発達な葉における小毛・大毛の分化過程の形態変化を電子顕微鏡(電顕)レベルで解明し、塩ストレスに応じて両者の数を制御する植物ホルモンを特定することを目指す。本年度の成果を以下3項にまとめる。 ①小毛と大毛の分化過程の形態変化: 走査型電顕観察により、完全展開した葉身では小毛と大毛の外形はすでに完成しているが、分化したばかりの長さ1 cm未満の葉身では基部に近いほど大毛の長さが短くなり、基部から1 mm未満の部位で小毛・大毛とも同じ外形を示す未分化段階であることが明らかとなった。この未分化な段階の葉について透過型電顕で観察し、小毛・大毛の細胞内微細構造を調査したが、今回の観察部位における表皮は未熟な細胞が密集しており、将来的に小毛または大毛になる細胞を識別することは困難であった。 ②小毛分化誘導ホルモンの探索: 各種植物ホルモン溶液を生育途中の植物体に茎葉表面から付与し、新たに伸長してきた葉について小毛および大毛の数を調査した。本年度はジャスモン酸、アブシジン酸の2種類を調査した。ジャスモン酸処理では、小毛数は有意に増減しないが、大毛数が増加することが確かめられた。一方、アブシジン酸処理では、小毛・大毛のどちらも増減はみられなかった。 ③ 塩ストレス強度と小毛の増減および植物ホルモンとの関連: 予備実験としてNaCl 水溶液(0-400 mM)を与えて生育させる塩ストレス処理を施し、処理開始後に伸長した葉における小毛および大毛の数を計測し、塩ストレス強度が高まるに伴い、小毛が有意に増加することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、名古屋大学大学院生命農学研究科の助教として勤務する初年であり、研究室の学生指導、実験実習の準備、その他事務等が初めてのことばかりで一つ一つ時間を多く費やしてしまい、研究活動の制約となっていた。次年度は職員としての昨年目の経験を活かして仕事の効率を高め、より多くの研究成果を挙げたい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き、研究計画に基づいて推進していく。昨年度は進行にやや遅れは生じたが、研究上の大きな課題に面したからではなく、個人の仕事の処理能力が身についていなかったことによる点が大きいため、昨年度の経験を活かし、作業効率を高め、職務に当たることで達成したい。
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