結腸直腸癌切除症例において、circumferential resection margin(CRM) 陽性は局所再発の有意な危険因子である。しかしCRM陰性であっても、CRM陽性症例同様に経時的に局所再発症例が増えている。これは外科的切除断端の病理組織学的評価法が、必ずしも局所のcancer freeを示すものとは限らないことを示す。そこで我々は、病理組織学的診断法よりもより感度が高いことが期待できる方法(外科的切除断端にnitrocellulose膜をimprintingする)、凹凸や広がりのある断端から広範に表面の細胞を回収する手法)を考案した。こうして収集した検体には確かにDNAが存在し、癌特異的markerを用いた定量的解析が可能となる。 今回このmolecular surgical margin analysisを自科の大腸癌切除症例に適用した。9例の切除症例(病理組織学的にsurgical margin negative)についてPAX5 promoter methylationをtargetとして検討した。まずこのマーカーが癌特異的マーカーであることを確認するため、tumorとadjacent epitheliumにおけるmethylation frequencyを比較。optimal cut off値を20%と設定し、8/9(89%)のtumor、そして0/9(0%)のadjacent epitheliumに高頻度のメチル化を認めた。一方surgical margin imprinted sampleにおいては、3/9(33%)にmethylationを認めた。予後との相関を得るには時間の経過が必要であるが、肉眼的に同定不能な癌遺残を同定できた可能性があり、molecular surgical margin analysisの有用性を部分的に示した。
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