本研究は昨年度、炎症性早産モデルマウスに対し、抗酸化剤である分子状水素を用いて早産の予防が可能かどうかを検討し、妊娠期間の延長を認めた。 そこで本年度は、分子状水素は食品添加物として認可されているが、妊婦や胎児への安全性が確認されていないため、引き続き妊娠マウスを用いた催奇形性試験と毒性試験を行った。 まず、催奇形性試験では、妊娠5.5日目から15.5日目の器官形成期に限定して、母獣に50%飽和水素水を自由飲水させた。その後自然分娩に至った新生仔の外表奇形や死産率を確認した。コントロール群は通常水を自由飲水し、同じく自然分娩に至った新生仔とした。その結果コントロール群と水素水群はいずれも明らかな外表奇形を認めなかった。 また、毒性試験のプロトコールは、妊娠0.5日目から母獣にコントロール群は通常水を、水素水群は50%飽和水素水を自由飲水させた。自然分娩した後も引き続き水素水群の母獣に50%飽和水素水を自由飲水させ、新生仔の体重を記録した。生後21日目で離乳させたあと、水素水群の新生仔には生後70日目(10週齢)まで50%飽和水素水を自由飲水させ、体重を記録した。コントロール群と比較した結果、授乳中の新生仔の体重は、水素水群でやや重い傾向があった。また離乳後はコントロール群の雄と雌、水素水群の雄と雌の4群で比較したが、性別で比較したところ、成長や発達に有意差は認めなかった。 以上のふたつの試験から、分子状水素の母獣投与の仔への安全性を確認した。今後は臨床応用に向けて、ヒトにおける分子状水素の投与方法のプロトコールを確立して、早産抑制効果についても検討する。
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