研究実績の概要 |
平成29年度は、3次元多様体のヘンペル距離や曲線複体に関して、以下の研究を行った。
(1)これまでの研究において,与えられたヘンペル距離(3以上の自然数)を実現するHeegaard分解に対して,その曲線複体上の測地線が一意に定まるという性質を「keen」と定義し,このようなHeegaard分解が存在することを奈良女子大学の小林毅氏,張娟姫氏との共同研究で示したが,今年度は,この結果をまとめた論文がAdvance Studies in Pure Mathematics (ASPM), Mathematical Society of JAPANに掲載されることが決定した.
(2)曲線複体の性質(測地線,円盤複体などの部分複体)を細密な幾何学(Fine geometry)の観点からさらに追求すると共に,これまでの測地線の構成方法を利用して,絡み目の橋分解に対して「keen」の概念を拡張し,そのような性質をもつ絡み目の橋分解の構成に着手した.具体的には,奈良女子大学の小林毅氏,張娟姫氏との共同研究において,曲線複体上の測地線が一意に定まるHeegaard分解に対しては,非分離的単純閉曲線を用いて測地線を構成するが,絡み目の橋分解に対しては曲面上の非分離的単純閉曲線,分離的単純閉曲線のどちらを用いても構成することが可能であるということを確かめ,現在,keenな絡み目の橋分解の存在についてまとめた論文の執筆を進めている.
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