1.温熱感の変化に関する評価:温冷感評価として,実験室内にデシカントシステムを構築し,SET*の測定と機器の消費電力評価を行った.学内の90㎡程度の空間にWSSデシカントユニットとエアコンを設置し,各機器の吹き出し口の温湿度,消費電力,さらに室内温湿度分布,グローブ温度,風速を連続測定した.実測は10月中旬に開始し,冬期の加湿による温冷感の変化と消費電力について評価した.また,比較対象として従来のエアコンと第3種換気システムと比較を行った.デシカントシステムと従来空調を比較した結果,各システムにおいてSET*と室温の差がおよそ2.0℃であることが確認できた.絶対湿度については,従来換気システムでは室内,外気に大きな差は見られなかったが,デシカントシステム の場合は室内の絶対湿度が外気より,2.0 g/kgDA 程大きいことが確認できた.このことから冬期の無給水加湿が行われていたことが確認できた.消費電力,SCOP およびSET*の関係を調べた結果,消費電力はデシカントシステムの方が0.2kW程度高い傾向が示された.しかし, SCOPを見るとデシカントシステムが大きかった. 2.空気質の変化に関する評価 室内および空調内のカビ生育抑制方法の確立を目的に,空調システム構成が真菌数に与える影響と種々の培養条件における真菌生育条件の基礎的な調査を夏期に行った.その結果,空調機の稼動によって浮遊真菌数が減少することが確認された.室温,相対湿度が低下すると浮遊真菌数は減少し,基準値50 CFU/m3に達するのは温度制御のみでは26 ℃,相対湿度制御のみの場合では60 %を下回る範囲であることが確認できた.これらのことから,夏期には,調湿によるカビの抑制効果が期待できるため,省エネと空気質改善は両立できる見込みが示された.
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