研究課題/領域番号 |
15H06289
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
加藤 学 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (60626117)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 去勢抵抗性前立腺癌 / 線維芽細胞 / 不均一性 / 細胞表面マーカー / FACS |
研究実績の概要 |
本研究課題では、前立腺癌の周囲に存在する癌関連線維芽細胞(Cancer-Associated Fibroblasts: CAFs)が、どのようなメカニズムで前立腺上皮の異常増殖、前立腺癌の増殖、浸潤、転移、血管増生を促進するか、解析することを目的としている。我々はすでに、実際の前立腺癌患者から得た臨床検体を用いて、ヒト前立腺線維芽細胞の樹立を安定して行えることをこれまでの研究実績と同様、再確認することができた。 我々は、正常ヒト前立腺上皮細胞株とされるBPH1細胞を米国Northshore University、Surgery DepartmentのSimon Hayward labから譲り受け、実験を行った。 具体的には、BPH1を通常の培養条件下にて培養し、ラットI型コラーゲンに包埋し、免疫不全マウス(ヌードマウス)の腎被膜下に移植するというXenoGraft実験を行った。BPH1細胞単独ではヌードマウスの腎被膜下に生着は可能であるが、腫瘍の形成、増殖は示さないことを確認した。 ヒト前立腺癌患者検体から樹立した線維芽細胞とBPH1を混合移植することによって、BPH1細胞は、より高い腫瘍形成能、増殖能を示した。興味深いことに、市販の正常前立腺線維芽細胞であるPrSC(Lonza社)に比較し、我々の用いた、M5,M7線維芽細胞は、よりBPH1の増殖を刺激する傾向が確認された。 in vitroにおいても、PrSC、M5、M7から得たFBSなし(血清無し)のconditioned mediumを回収し、BPH1培養用のmediumであるRPMI1640(こちらも血清なしの条件下)と50%+50%混合した培養液条件下でのBPH1の増殖試験(MTTアッセイ)を行った。in vivoの実験と同じく、PrSCよりもM5,M7の方がBPH1の増殖を刺激する作用があることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的にはCAFsで優位に発現が亢進する増殖因子、細胞表面マーカーを同定し、これらのタンパクがどのように作用し、前立腺上皮細胞が去勢抵抗性を獲得していくのかの解析を予定しているが、現在のところ、BPH1細胞の増殖を促進するヒト前立腺癌患者検体から得た線維芽細胞が2種類、ごくわずかに増殖を促進する市販の前立腺線維芽細胞を1種同定している。今後はさらに動物実験をすすめ、腫瘍形成、増殖を促進する線維芽細胞と(最低1種)、またごくわずかに促進、もしくは促進しない線維芽細胞を(最低2種)もちいて、これら2群において、発現の異なる細胞表面マーカーもしくは分泌される増殖因子を探索するため、FACS解析、もしくはELISAを行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究代表者は、特定の細胞表面マーカー(Stro-1、CD105、CD117)について、前立腺上皮細胞の増殖を促進する程度によりその発現が異なることを確認しているため、今後は線維芽細胞の群分け、調整が済み次第、FACS解析を進めていく予定である。 またBPH1で行った実験を去勢抵抗性前立腺癌のモデル細胞となりうる22RV1によって行うことにより、去勢抵抗性癌、さらにはより悪性度の高い去勢抵抗性前立腺癌への進展におけるこれらマーカーの寄与についても検討を加えたいと考えている。さらにその増殖因子や細胞表面マーカーの産生もしくは発現を阻害することにより、癌細胞における特定のシグナル伝達が阻害され、去勢抵抗性前立腺癌への進展を抑制する、もしくはその期間を延長することが可能であるかを検証する。 具体的には、細胞表面マーカーについては、Nucleofectionを用いた特定のマーカーの過剰発現細胞を作成することによって、またsiRNAによるノックダウンによりその性質が変化することを検証する。増殖因子に関しては、サイトカインアレイを用いての検索、また同様にNucleofectionによる過剰分泌、また阻害薬による阻害による検証を計画している。 Nucleofection、siRNA処理後の培養に関しても、現在用いている、Lonza社製(SCGM BulletKit (CC-3205)培養液であれば、高確率に、生存細胞の培養継続、また抗生剤を用いたselectionが可能と考えている。
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