研究課題/領域番号 |
15H06300
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
牛久 晴香 長崎大学, 多文化社会学部, 戦略職員 (10759377)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 流通と消費 / 手工芸品 / 経済人類学 / ガーナ / インターフェイス |
研究実績の概要 |
アジアやアフリカでつくられる手工芸品の消費は、フェアトレードや手仕事の評価など、新自由主義的な経済システムの推進や大量生産・廃棄にもとづく消費文化、発展途上国の搾取による物質的な繁栄等に対するアンチテーゼとなる思想や運動という側面をもちながら促進されている。本研究の目的は、ガーナ北部で生産されるボルガ・バスケットが、日本の消費者や企業によってどのように消費・販売されているのかを実証的にあきらかにし、現代的な消費理念に影響されつつも異なる意図や論理をもって消費・流通にかかわる、消費者や企業(消費地卸)の実践がうみだす手工芸品のグローバルな循環の動態を解明することである。 平成27年度(10月~3月)は、ボルガ・バスケットが消費される文脈をあきらかにするため、ボルガ・バスケットを販売する日本企業のインターネット広告、個人ブログ、紹介記事等計100件を分析し、同バスケットの消費に関わるキーワードを析出した。その結果、以下の点が明らかになった。①ボルガ・バスケットの広告につかわれる文言は、「天然素材」、「手づくり」、「実用性」(耐久性、外観のよさ、多用途につかえる、など)に関するものが最も多かった。②この結果を、すでに分析していた欧米企業の広告分析の結果と比較した結果、欧米で多用される「フェアトレード」「エシカル」等の「消費倫理」に関わるキーワードの出現頻度が、日本では非常に低かった。以上から、日本では倫理的消費よりも、ものづくりの過程や商品そのものの価値が重視されており、アフリカの手工芸品の循環を促す消費潮流が消費地によって異なることが判明した。 消費地卸の実践に関する調査については、インフォーマントの1社である消費地卸の経営方針に大きな変化があったため、ガーナに渡航し現状を把握した。また、消費地卸との対話を通じて来年度のための調査体制を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究環境が変化したため、消費地卸や消費者の流通・消費実践に関する現地調査に費やせる期間が当初の予定よりも減ってしまった。しかし、消費地卸との密度の濃い対話を通じて、来年度の本調査に活用できる情報を十分に収集することができた。 広告分析は予定通り実施することができた。また、予想外の成果として、日本と欧米の消費潮流の相違をあきらかにすることができた。この発見は今後の研究の進展にとって重要な着眼点となることが期待でき、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
28年度前半は、アフリカの手工芸品をとりまく消費潮流が生み出された社会経済的背景、文化的背景に関する文献研究をおこない、日欧米の現代消費文化を手工芸品の流通という現象から考察する論文を学術誌に投稿する予定である。 8月には2週間、関東において消費地卸の取引実践に関する現地調査をおこなう予定である。申請時は消費地卸の実際の業務に無償で従事し、合計2ヶ月間の参与観察を実施する予定であったが、研究環境が変化したため、現地での調査期間を短縮せざるをえなくなった。期間を短縮する分、企業間関係や生産・流通上の問題に関して、より密度の濃い聞き取り調査・観察ができるような体制を整える。具体的には、メールや電話を通じた情報収集、論点の焦点化、調査対象企業の厳選等により対応する。 28年度後半は消費者の購買行動に関する調査をすすめる。2月には関東の小売店で2週間の現地調査をおこなう。当初は小売店における消費者への聞き取り調査のみを想定していたが、量的データを収集するため、小売店のホームページ等に掲載されている「口コミ」「評価」欄の文言の分析を実施する。 また、28年度はこれまでの研究をまとめ、その成果を国内外の学会で発表することを目指す。
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