国際機構は一般的に、国内裁判所において裁判権免除を有しており、機構によって違法に損害を被ったと主張する者は、原則として国際裁判所を利用できない。しかし近年、国際機構が提供する手続の不備を背景に、国際機構の裁判権免除を制限的に解釈する人権アプローチが盛んに主張されている。これらの主張の根拠は、国際機構自身の人権義務に求められることもあれば、構成国が負っている国際人権法上の義務とされることもある。しかし、少なくとも国連の裁判権免除に関して、制限的解釈は正当化されないという結論に至った。他方で、国連の代替手段提供義務については人権適合的解釈の余地があり、国連の制限的な立場は再検討を要するものである。
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