研究実績の概要 |
研究期間中、5本の論文(単著4本、共著1本)、6回の研究報告(国内学会4回、国際学会2回)を発表した。論文について、①滋賀大学経済学部研究年報に掲載された「1928年国際連盟モデル租税条約草案の作成過程と成立」では、国際連盟史料館所蔵の専門家委員会の議事録を分析することで、今まで十分に明らかにされてこなかった世界初のモデル租税条約の成立過程を明らかにした。②経営史学に掲載された「20世紀前半のイギリス企業と英米間の二重所得課税問題」では、第一次大戦による国際的二重課税問題の顕在化から、イギリスが帝国外の国と初めて包括的な租税条約を結んだ1945年に至るまでのイギリス企業の適応過程と、政府への働きかけを詳らかに明らかにした。③EBHA/WCBHでの報告を基にしたワーキングペーパー"Multinational Enterprises and International Double Taxation, 1914-1945: A Comparison between the UK and Japan"では、国際的二重課税問題に対する日英の比較研究を行った。④経営史学会東北ワークショップ・社会経済史学会東北部会での報告を基にした「帝国日本の国際課税制度と特質」では、戦前の日本の国際課税制度を明らかにした上で、その社会経済史学上の意味づけを論じた。⑤北川亘太との共著作は、経済論叢に採択され、アメリカ社会経済史の包括的な記述を担当することで、世界初となった外国税額控除の実施がアメリカで行われた背景を記述した。
代表的な研究報告について、スイスで行われたGlobal Histories of Taxation and State Finances Since the Late 19th Centuryに参加・報告することで、国内外の税制史研究者と交流を図り、研究の国際的認知を得た。
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