数学基礎論と量子基礎論の融合を可能にする申請者の圏論的普遍論理の枠組みが一階論理の範囲を超えて高階論理に対しても適用可能であることを示した。さらに通常の仕方では構造が矛盾して潰れてしまう数学基礎論的な空間概念(Toposという圏構造)と量子論的な空間概念(圏論的量子力学におけるDagger-Compact圏)の齟齬を調停した統一的な空間概念が圏論的普遍論理の手法により得られることが分かった。圏論的普遍論理は簡単に言うとLawvereのHyperdoctrineの理論とHyland-Johnstone-PittsのTriposの理論を任意のモナドのレベルまで一般化したものである。
また非可換双対性を念頭において層理論による双対性理論を構築した。グロタンディークによる可換環とアファインスキームの双対性は良く知られているがこれは非可換環に拡張できる。そうした双対性の一般理論を"Grothendieck situation"という概念を定式化することで構築した。この理論は環のような数学的な代数構造から部分構造論理のような数学基礎論的な代数構造にまで一様に適用できるもので多くの未知の双対性をその系として導出することができる。特にC*代数やquantaleのような量子基礎論的な構造にも適用可能であり数学基礎論と量子基礎論の融合という精神を体現した結果である。
最後に機械学習における双対性についてはカーネル法や所謂カーネル・トリックの基礎にあるカーネル函数から再生核ヒルベルト空間を構成する仕方がfunctorialになっておりカーネル函数をChu空間とみなすことによってカーネル函数の圏と再生核ヒルベルト空間の圏の間に二種類の双対性が存在することを証明した。この結果は機械学習のカーネル法を双対性理論の応用例として理解することができるということを意味し双対性理論の実際的有効性を示すものである。
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