本研究課題では、実用的な有機分子触媒反応の実現を目標とした、新たな分子骨格を有する有機分子触媒反応の開発に取り組んでいる。具体的には、糖類のアノマー位に、官能基を持つ芳香環が直接結合したアリールC-グリコシド構造を母骨格とした、二間能性有機分子触媒の設計と、その触媒の合成及び、それらを利用した新規不斉反応の開発研究を行った。本触媒は、糖ユニット、芳香環ユニットそれぞれに対し、構造や官能基のチューニングが容易であるため、多様な触媒ライブラリーの構築が期待できる。それらを利用することにより、従来の有機分子触媒では実現不可能であった、不斉反応への適用を試みる。
本年度は、昨年度に引き続き、触媒の合成ルートの探索を行った。市販されているグルコサミンやグリカールを出発原料として、糖の2位にアミノ官能基を有する触媒前駆体の合成ルートの検討を行った。昨年度うまくいかなかった合成ルートを見直し、新たな合成ルートに基づいた触媒合成の検討を行った結果、低収率ながらも目的の触媒前駆体の合成に成功した。また、2位にアミノ基でなく、リンやホウ素官能基の導入を試みたが、現時点では目的化合物の合成には至っていない。今後は、アリールーC-グリコシド構造の構築の検討を行い、目的とする触媒の合成を行う。また、各段階の収率が高くないので、反応条件及び合成ルートを再度検討することにより、それぞれの段階での収率の向上を目指す。
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