研究課題
本研究の目的は、配位結合が示す高い構造設計性を利用することで、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に代表される膜受容体の機能を合理的に設計・制御することである。遺伝子工学による点変異導入技術により膜タンパク質表面に対して、金属配位サイトを位置選択的に導入することで、金属イオン・錯体との配位結合により膜タンパク質のプログラム制御を行うことに成功した。【グルタミン酸受容体の活性制御】グルタミン酸受容体は、神経細胞に局在し記憶や学習に関与する重要な受容体である。本研究では、活性化時に観測される受容体の構造変化を配位結合により誘起することで、グルタミン酸受容体の活性制御に成功した。具体的には、グルタミン酸受容体のリガンド結合部位に対してヒスチジン変異を導入した変異型グルタミン酸受容体を遺伝子工学により構築した。構築した変異型受容体を哺乳類モデル細胞・培養神経細胞に発現させたのち、活性化を評価したところ、変異型グルタミン酸受容体のみを選択的に活性化することに成功した。この手法を用いることで、記憶や学習におけるグルタミン酸受容体の生理機能の解明につながると期待される。【配位アンカーによるclass A GPCRの活性制御】Class A GPCRは膜タンパク質の中でも、最大のファミリーを形成しており、その生理学的重要性は極めて高い。そこで本研究では、標的class A GPCRを人工的に活性化できる新手法として、配位アンカー法を考案した。配位アンカー法を用いることでclass A GPCRの一種であるアドレナリン受容体の活性化に成功した。この手法は、原理上全てのclass A GPCRに適用できると考えられ、膜受容体の機能解析のために役立つと期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Chemistry
巻: 8 ページ: 958-967
10.1038/nchem.2554