2016年度は,引き続き電解めっき法によって作製したNi-YSZ燃料極の耐久性評価を進めるとともに,無電解めっき法による燃料極作製も試みた.電解めっき法により作製した燃料極の耐久性を700℃の温度条件下で測定したところ,時間とともに抵抗が増大したため,安定性に問題があることがわかった.そこで,酸化還元処理の実施,多孔質骨組み構造中の銀の量の低減,およびニッケルの増量を行ったところ,性能の低下率を低減することができた.性能が不安定な原因は,電極内に残った銀の影響によるものと考えられるため,銀の量をさらに低減するだけでなく,凝集エネルギーの小さい(構造がより安定した)銅や鉄によって銀を置き換えることができれば,更なる性能の安定化を図れると予想される.FIB-SEMによる電極微構造解析の結果からは,電解めっきによって作製した電極の特徴は熱分解法によって作製したものと似通っていることがわかった.特にNi粒子径が小さいことにより三相界面密度を増大させられることが確認できた. 次に無電解めっき法による電極作製を試みたところ,熱分解や電気めっき法によって作製した電極よりも電気化学性能が低いことがわかった.無電解めっきに用いる水溶液の濃度や反応温度などを様々に変化させたが,望ましい電極性能を得ることができなかった.FIB-SEMによる電極微構造解析から,無電解めっきによって作製した電極では,Niが電極表面側に堆積しやすく,骨組み構造内に一様にNiを導入することが難しいことがわかった.これは,無電解めっき法では多孔質中にNiを導入する際の速度をコントロールすることが重要であることを示唆している. 2年間の研究から,熱分解法,電解めっき法,無電解めっき法という3種類の含浸法が持つ長所と短所を明らかにすることができた.また,それぞれの手法において重要となる作製条件に関する知見を蓄積することができた.
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