研究課題/領域番号 |
15H06325
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関山 直孝 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50758810)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 翻訳制御 / RNA / RNA結合蛋白質 |
研究実績の概要 |
細胞は、栄養欠乏状態や低酸素状態などのストレス条件下において、エネルギーの消費を抑えるため、5’TOP (Terminal OligoPyrimidine) motif を持つmRNA (TOP mRNA) の翻訳が制御されていることが知られている。TOP mRNAの配列は、リボソーム蛋白質や翻訳開始因子をコードするmRNAに多く見つかっており、細胞増殖を制御していることは明らかになっているが、その制御機構については未解明である。最近、LARP1という蛋白質がTOP mRNAに選択的に結合することが報告され、その制御機構の解明が期待されている。そこで本研究では、LARP1とTOP mRNAとの相互作用の構造学的解析により、TOP mRNAの機能活性化のメカニズムについて解明することを目的とする。 LARP1とTOP mRNAの相互作用は、LARP1のリン酸化依存的であると考えられている。そこで、LARP1と同様にmTORC1にリン酸化される基質の一つである4E-BP1を用いて、リン酸化による構造変化をNMRにより捉えることを目指した。初めに、4E-BP1とその結合因子であるeIF4Eを、それぞれHis-GB1タグおよびGSTタグ融合体として調製し、複合体のリコンビナント蛋白質を精製することに成功した。次に、前述のサンプルを用いてin vitro phosphorylationを行いながらNMR測定を行ったところ、スペクトルの変化を経時的に捉えることができた。 今後は、このスペクトル変化がリン酸化由来のものなのかを確認し、さらに本手法をLARP1のリン酸化に応用していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、TOP mRNAとLARP1の構造学的解析を中心に行うことを予定していたが、LARP1のリン酸化がTOP mRNAの相互作用を変化させることを考慮し、リン酸化依存的な構造変化を捉えるNMR測定の開発に取り組んだ。 LARP1と同様にmTORC1によりリン酸化される4E-BP1とその結合因子であるeIF4Eを用いて、サンプル調製およびNMR測定を行うことができた。4E-BP1はmTORC1の基質として広く知られていることから、今回の結果はリン酸化依存的な相互作用変換の構造基盤としてのモデルケースになると考えられる。 今後は本技術をLARP1に応用することで、TOP mRNAとの結合定数や相互作用表面がLARP1のリン酸化によりどのように変化するのかを解析し、リン酸化依存的な相互作用変換について検証する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、4E-BP1に用いたリン酸化依存的な構造変化を捉えるNMR測定のLARP1への応用を予定している。 加えて、TOP mRNAの構造変化を捉えるNMR技術の開発にも着手する。これには19Fを用いたIn-cell NMR法をRNAに応用し、RNAの構造変化やRNA結合蛋白質との相互作用を試験管内および細胞内で検出することを目指す。具体的には、2’位がフルオロ化されている基質、2’-Fluoroヌクレオチドを用いてRNAを合成し、19F標識されたTOP mRNAを調製する。この19F標識TOP mRNAに対してLARPを滴定することで19F NMRのシグナル変化を捉え、LARP1とTOP mRNAの相互作用変化を解析する。 さらに、この19F標識TOP mRNAをエレクトロポレーションにより細胞に導入し、細胞内でのTOP mRNAとLARP1の相互作用の検出を目指す。
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