消化管内視鏡における画像強調観察法を用いた生体内蛍光イメージング法を開発して、消化管腫瘍の増殖因子受容体を内視鏡下に可視化し、分子標的治療薬の治療効果予測マーカーとしての有用性を明らかにすることを目的として、本研究を実施した。 臨床医療に汎用されている内視鏡システムとして、オリンパス社ならびに富士フィルムメディカル社製の内視鏡システムが当研究室では使用可能である。この2つの内視鏡に搭載されているシステムを用いて照射、検出できる波長を利用するため、405nmを励起波長とする蛍光標識物質を選択した。さらに、現在臨床医療にて、主に大腸癌治療に対する分子標的治療薬である抗EGF-R抗体(セツキシマブ)を今回の研究に用いる抗体として選択し、405nmを励起波長、420nmを蛍光波長として、蛍光標識を行った。 研究初年度には、目的抗体に蛍光標識を行う過程はほぼ終了し、EGF-R過剰発現細胞であるA431細胞と標識抗体を反応させ、Plate readerにて蛍光波長の検出を行うことに成功した。無標識の抗体と比して、2倍程度の感度での検出が可能であった。そこで、富士フィルムメディカル社製の内視鏡システムに搭載されている、400から420nmのレーザー光を照射可能なBlue Leaser Imaging機能を用いて、in vitro実験を施行した。Plate readerでの検出方法と同様に、A431細胞に対して、標識抗体反応群と、無標識抗体反応群とに分け、完全な暗室内にて、Blue Leaser Imagingにて検出を試みた。結果、実臨床で用いる内視鏡では、消化管内腔構造の視認性向上のため、特定のレーザー光以外に、通常光が射出されており、本研究期間内には、2群間に明確なコントラストを得ることは不可能であった。通常光の遮断を行うことができれば、蛍光標識を検出することも可能と考えられた。
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