研究課題
ギャンブル障害患者及び健常対照群のリクルートを行った。各被験者に対し、病的賭博の重症度を表すSouth Oaks Gambling Scale(SOGS)、賭博への渇望の程度を表すGambling craving scale等の心理学的検査、行動経済学を取り入れた行動実験を行った。続いて、大学設置のMRI装置にてT1強調3D画像、拡散テンソル画像、および強化学習課題を用いた脳機能画像、安静時の脳機能画像を撮影した。安静時脳機能画像の解析にあたり、以前の我々の研究において知見が得られた島皮質に着目した。健常群では島皮質とdefault mode network (DMN)領域との機能的結合が負の相関を示したのに対し、ギャンブル障害群では健常群で見られた負の相関が減弱していた。ギャンブル障害患者における島皮質によるDMN領域抑制の減弱は、大規模脳ネットワーク間の切り替えを阻害することで、ギャンブルに心を奪われていることや様々な認知機能障害に繋がっている可能性がある。また、強化学習課題を用いた機能的画像においては、ギャンブル障害群は健常群と比較して、報酬関連の脳活動では大きな差は見られなかったが、損失関連の脳活動が相対的に減弱している傾向が見られた。ギャンブル障害患者は病態進行の過程において莫大な損失を繰り返し経験していることがこの知見と関連するのではないかと考えられる。また、損失感受性に着目した行動実験においては、ギャンブル障害患者は高損失感受性群と低損失感受性群に分けられることを示し、前者では刺激希求性や渇望が高く、後者では不安が高いことを明らかにした。また、ドーパミン遺伝子と脳構造の関係を調べた研究では、ギャンブル障害患者内においてマイナーアレル保有者は非保有者と比較して、脳梁前部、放線冠等で白質統合性の有意な低下を認めた。
2: おおむね順調に進展している
医療機関に繋がることが少なくリクルートの難しいギャンブル障害患者群、及び健常対象群の画像・遺伝子・心理検査データを順調に収集出来ている。また解析も随時行っており、予備的な結果も報告出来ている。また、行動実験データの成果を論文化し英文誌に受理された。
ギャンブル障害患者及び健常対照群のリクルートを継続し、心理検査データ、行動実験データ、灰白質・白質の構造画像データ、課題時及び安静時機能画像データ、血液データをさらに蓄積していく。そうしてデータベースをより強固なものにしていき、よりインパクトの高い研究を目指す。データ収集と並行してデータ解析を継続する。より新しい解析方法についても習得を目指し、その結果について国内外の学会で発表を行う。そして最終的には英文誌に投稿し受理を目指す。こうして得られた成果を社会に発表し、臨床現場への還元を目指していく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Journal of Gambling Study
巻: Epub ahead of print ページ: 印刷中
10.1007/s10899-015-9587-1