申請者は、大学院博士課程から、basal-like乳癌(臨床的には治療標的のないトリプルネガティブ乳癌に相当する)の細胞株に対して、上皮間葉転換を基軸にした新規レポーターアッセイを行って来た。 その中で、ミトコンドリア複合体構成遺伝子の変化に伴う代謝機能の変化ががん幹細胞性(特に足場非依存性増殖)に関与するのではないかという仮説から、がん代謝(主にミトコンドリア機能)の面から修飾した乳癌細胞株の足場非依存性増殖活性を検討して来た。メタボローム解析には時間を要しており、解析は完了していないが、上皮系寄り、間葉系寄り(仮説では幹細胞様の変化もみられる)の細胞間で代謝のプロファイルに違いがみられており、これらの特徴ががん細胞にどのような変化をもたらすかについてさらなる検討を要すると考えられる。 また、shを用いて細胞の移動能に関する機能抑制系のアッセイで以前から検討されていた遺伝子の下流に、がん代謝との直接の関連は見出されていないものの、同じく足場非依存性増殖、anoikis抵抗性などに関与すると思われる遺伝子を新たに同定した。この遺伝子はこれまで幹細胞性の変化として多く報告されてきたCD44の発現の仕方に関与していることが実験から明らかになった。 現在は上記のメタボローム解析と並行してこの新規遺伝子の機能解析を進めている。こちらも論文化を進めている状況である。
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