本研究では不均一な光源強度下、もしくはセンサ露光時間/感度が不均一な状況下における照度差ステレオ法(photometric stereo)の定式化と実装を行った.従来の照度差ステレオ法を一般化し、光源強度と3次元形状の同時推定問題と捉えることでこの問題が非負の双線形問題として定式化できることが明らかになった.また,この問題が一般的な双線形問題とは異なる構造を持ち、この特性を利用することで交互最小化(alternating minimization)の枠組みでユニークな最適解が求まることを示した.この最適化手法をソフトウェアとして実装し,シミュレーションデータと実世界データの両方を用いて実験を行い,どちらにおいても従来手法に比して良好な結果が得られることを確認した.また,従来のセッティング(均一光源強度、均一センサ感度)を仮定した場合においても,従来手法を下回らない性能が実現できることを確認した.さらに,光源の変化に応じて適応的にカメラセンサの露光時間を制御することで量子化誤差を低減し高いシグナル・ノイズ比(S/N比)を得られることに着目し,提案手法をそのようなデータに適用することで従来手法を上回る形状推定精度を達成することができた. H27の下半期では上述の結果をさらに発展させ,従来の線形反射モデルに依存しないロバスト推定の枠組みで再定式化を行った.また外れ値を適切に除去するロバストな行列因子分解法を適用することで,線形反射モデルに沿わないデータに関しても良好な推定結果が得られることを確認した.
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