小村雪岱が挿絵を提供した小説の初出一覧を作成した。特に、雪岱挿絵の代表作とされる邦枝完二作品における、挿絵と小説本文の関連性を綿密に調査・考察した結果、挿絵の典拠となる既存絵画の存在、舞台装置家としての視点を基盤とする演劇との親和性、モチーフの実見などの、雪岱挿絵の明確な方法論が明らかとなり、雪岱が小説本文を精読した上で作家の意図を正確に把握し、作品世界に相応しい挿絵の作成に努めていることが分かった。 また連載小説が単行本化される際に雪岱の挿絵が利用されることは、同時代における文芸書出版の形態として特異な事象であり、出版元の新小説社社主・島源四郎という人物の果たす役割が大きいことも明らかにした。
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