申請者は、朝鮮通信使と日本の文人との間で行われた漢詩文交流を考察することを通して、日朝間の文人たちの交流の裏面にあった様々な意識を明らかにすることができた。 1719年に朝鮮通信使として日本を訪れた申維翰と唐金梅所との漢詩交流の分析を通しては、中国古文辞派詩風の影響が日朝間において共通項として作用していることが確認できた。また、新井白石『白石詩草』中の「自鳴鐘」詩の分析を通して日本の文明に対する白石の自負心および朝鮮に対する対抗意識を読むことができた。さらに、申維翰が日本の文人に宛てた漢詩に自作の再利用があったことを明らかにし、通信使たちの創作環境が劣悪だったことへの傍証とすることができた。
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