本研究は世紀転換期の日中両国の知識人における越境行為を、神智学を用いて、歴史・思想・文学などから多層的に分析を行い、人的交流の様相及び自他国文化の止揚・統合について実証的な研究を行った。その成果として、多様な研究分野でも幅広く汎用できる研究資源が網羅されるほか、第一に近代中国知識人の東西文明観の枠組みで捉えてきた伍廷芳の東西文明論の特徴が示されたことで、従来の研究の活性化・多層化を促す効果が見込まれる。第二に、日中知識人の神智学受容を考察することで、神智学の持つインターナショナリズム的性質が民族主義や汎アジア主義に転化されていったことの一隅を明らかにした。
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