研究課題/領域番号 |
15H06355
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 敏之 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90757709)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 電気光学 / 周期分極反転構造 / 空間光変調器 / レーザーディスプレイ |
研究実績の概要 |
広い色再現範囲を有し、低消費電力化が期待できるレーザディスプレイへの応用を目指し、電気光学変調器を用いた一次元空間光変調器をさらに発展させて、新たな二次元空間光変調器を実現するために理論検討およびデバイス試作を行った。 まずモード結合理論を用いて、画素電極幅および画素ピッチが満たすべき条件を、レーザディスプレイを構成する赤・緑・青色レーザ光に対してそれぞれ求めた。つぎに、電気光学ブラッグ回折型変調器を二次元方向に多数配列することにより構成した二次元空間光変調器を検討した。二次元印加電界強度分布を計算することにより、画素電極幅およびギャップ幅が消光比や画素間クロストーク特性に与える影響を考察した。 高パワー短波長光入力時に問題となる光損傷を回避するために、高光損傷耐性の5mol%酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウム結晶を用いた。液体電極電圧印加法により周期20ミクロンの分極反転構造を形成し、電極幅160ミクロン、ギャップ幅40ミクロンで画素電極を装荷した。波長632nmのHe-Neレーザ光をブラッグ角で入射し、画素電極に変調信号を与えたところ、変調信号の変化と対応する光強度変化が確認できた。 レーザディスプレイにおける課題であるスペックルノイズを低減する手法の1つである偏光多重化技術への応用を目指し、周期分極反転構造を用いた電気光学偏光変換型変調器を検討した。近年開発された高光損傷耐性を有する8mol%酸化マグネシウム添加タンタル酸リチウム周期分極反転構造を用いて電気光学偏光変換型変調器を構成し近赤外光を用いて評価を行ったところ、偏光変換効率90%が得られた。また必要分極反転周期が理論予測と大きく異なることを見出し、実験結果から必要分極反転周期を見積もる方法を提案した。これにより可視光の偏光変換変調が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
周期分極反転構造形成技術を中心とするデバイス作製にやや時間を要したため、当初計画していた変調器における駆動電圧の低減方法および緩和現象の低減方法の検討を十分に行うことができなかった。そのため、研究課題をより発展させた空間変調の二次元化について理論検討および試作を進め、研究計画の遅れを補うように努めた。
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今後の研究の推進方策 |
周期分極反転構造を用いたブラッグ回折型一次元空間光変調器を積層することにより構成した二次元空間光変調器を実現するために、周期分極反転結晶の貼り合わせ、研磨の手法によりデバイスを作製する。赤・緑・青色レーザ光による空間変調動作を行い、消光比・画素間クロストーク特性を評価する。 液晶や機械的方式と比較して電気光学効果を利用した本デバイスは高速応答が期待できるため、光強度変化の時間応答を評価し、本デバイスが高速動作に有利であることを実験的に検証する。 三原色レーザ光に対して同一基板上で別個に空間変調動作を与えられるように、周期分極反転構造や画素電極の最適設計についてモード結合理論およびビーム伝搬法を用いて解析・設計を行う。 さらに、ブラッグ回折型光変調器における光偏向動作を利用したレーザー照明技術についてもデバイス構成等の検討を行う。
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